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白内障

ICL治療を受けると白内障のリスクが高まるという報告があります。それは本当なのでしょうか。

そして、リスクがあるとすればどのような対策が取られているのでしょうか。現在のICL治療の実際を踏まえ、その関係性について説明します。

通常のICL治療における白内障のリスクは1~2%ほど

従来のICLは房水循環(眼の中の水の流れ)が悪くなるというデメリットがあり、そのため白内障が進行するリスクを指摘されていました。

レンズそのものは生体適合性が高い素材でつくられているとはいえ、眼の中では異物に違いありませんので、炎症や房水循環障害を起こして白内障を合併する可能性はついてまわります。事実、ICL治療を受けた後に発生した白内障の病型は前嚢型白内障が多く、これは水晶体への房水供給が変化したことによる栄養障害が疑われるという報告があります。この白内障の発生率は1~2%ということで、決して少ない数字とはいえません。
参考元:北里大学ICL研究会(https://icl-japan.net/about/)

そのため、従来のICL治療では房水循環を保つことを目的として、手術前もしくは手術中にレーザーで虹彩を切開する方法が取られていました。しかしこの方法を行うと、まれに夜間に光をまぶしく感じたり、光の周辺に輪が見えたりする合併症を引き起こす可能性があります。

ホールICLの使用により白内障リスクが軽減

そこで注目を集めたのがホールICLです。これはレンズの中央に極小の穴を開けたもので、房水循環が改善されて白内障のリスクが軽減されました。

以前のように房水循環を改善するためにレーザーで虹彩を切開する必要がなくなったため、患者さんの負担も少ないICL治療が行えるようになったと考えられます。もちろん、レンズに穴を開けたことによる視力矯正力の低下もありません。

ところで、ホールICLは日本発だということをご存知でしょうか。ホールICLは白内障リスクを解決すべく、北里大学がICLレンズメーカーの協力のもとで2007年に開発したものです。

白内障リスク軽減のエビデンス

ホールICLは日本で開発され、世界で初めてホールICLの移植がなされたのは2007年のことです。CEマークの取得が2011年、日本での薬事承認は2014年であり、したがって長期的な白内障リスク軽減のエビデンスはまだ存在しません。

しかし、現在は世界70か国以上で有効性を承認され、それに基づいて多くの人が手術を受けていることは事実です。そして術後7年間のデータでは白内障を発症したという報告はありません。

ICL治療後の白内障手術も可能

白内障は、加齢等によって水晶体が白く濁り視力が低下する病気です。白内障手術は濁った水晶体を摘出して代わりに人工レンズを挿入しますので、ICL治療を受けていた人はもともとのレンズを外せば手術を受けることが可能です。

レンズを取り外せるというICL治療のメリットがここでも活きてくるといえるでしょう。レーシックを受けていた場合は正確なレンズ厚の計算が難しく、白内障手術を受けてもクリアに見えない恐れがあるという考え方もあります。

ちなみに、白内障の人工レンズには多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズがあります。前者はいわゆる遠近両用レンズで、患者さんの生活習慣に合わせて選択することになります。そしてICL治療と同様、白内障の人工レンズ挿入も日帰り手術が可能です。

そもそも白内障とは

視力が低下する病気

白内障は、水晶体が白く濁って視力が低下する病気です。

水晶体はカメラのレンズのような役割を持つ組織で、光を集めて屈折させ網膜に届けます。主にたんぱく質と水でできています。その水晶体は、加齢や紫外線の影響などを受けることにより、だんだんと白く濁ってきてしまいます。

この症状が白内障で、水晶体が濁ることによって光が網膜に届けられなくなり、眩しさや視力低下などの症状がおこります。

白内障の主な症状

光が眩しく感じる

通常目に入った光は、水晶体や角膜によって屈折し、網膜に届けられます。しかし、白内障の症状が進んで水晶体が濁っていると、目に入った光が上手く屈折させられません。場合によっては乱反射することもあり、光が眩しく感じることもあります。

視界がかすむ

水晶体は、カメラでいうとレンズのような役割を果たす組織です。その水晶体が濁っていると、ものがぼやけて見えたり、視界がかすんだりする症状が現れることがあります。

視力低下

白内障が進行し水晶体の濁りが強くなってくると、網膜に光を届けられず、ものが見えにくくなります。

また、白内障が進行すると水晶体が固くなってくることもあります。水晶体が固くなると近視が進行しやすくなり、手元の視界だけはクリアになるということも起こり得ます。

明るいときと暗いときで見え方が変わる

とくに加齢による白内障に起こりがちな症状です。

通常、目は瞳孔の収縮によって光を調節し、日中・夜間のものの見え方が同じになるようにします。しかし老人性の白内障の場合は、水晶体の周辺部から白くなっていくため、とくに暗いところではものが見えにくくなったり、以前よりも全体が暗く見えるようになったりします。

白内障の種類と原因

白内障には種類があり、各白内障によって原因も異なります。

老人性白内障

加齢が原因で起こる白内障です。年齢を重ねることで、誰にでも起こりえます。これは、水晶体のタンパク質が変性することで起こる症状です。

水晶体(目の中にあるレンズの役割を持つ器官)は水とタンパク質でできていますが、紫外線によって活性酸素が増えると、水晶体のタンパク質が変性して老人性白内障となります。

糖尿病性白内障

原因は明確にされていませんが、糖尿病性白内障は高血糖値が慢性化することでソルビトール(糖アルコール)の濃度が上がり、水晶体の中に蓄積されることで起こりうると考えられています。糖尿病の方は注意が必要です。

アトピー性白内障

アトピー性皮膚炎を発症している人の中には、白内障を発症する方もいます。原因は、まだはっきりとは分かっていません。

先天性白内障

名前の通り、生まれつき水晶体に混濁がある状態です。遺伝的な原因が考えられます。また、母親が妊娠中に風疹を発症した際、胎内で感染することも原因とされる白内障です。

水晶体の濁りが強い場合、早めの手術が必要となります。もし子供の白内障を放置してしまうと、弱視の原因にもなりかねません。

外傷性白内障

目をケガすることで発症するのが、外傷性白内障です。強い衝撃を受けた際、水晶体がダメージを受けると起こりえます。スポーツや仕事をしている際の事故で発症する可能性があるので、ケガをしないよう対策はとっておくべきでしょう。

外傷によっては通常の手術で対応できない場合もあるうえ、進行が速いケースもあります。症状を目をケガした際は、専門医に診てもらうようにしましょう。

併発性白内障

他の目の病気に併発して起こる白内障もあります。ぶどう膜炎や網膜剥離などに併発して起こる可能性があるため、こういった病気の診断を受けた際は定期的に眼科で受診するようにしたほうが良いでしょう。

白内障の治療方法

初期の白内障の場合は、点眼薬を処方することによって進行を予防します。ただし、点眼薬は進行を抑制する効果があるだけで、視力などを改善させられるわけではありません。

症状が進み、日常生活に支障をきたしている場合には、外科的手術を行います。一般的なのが「超音波乳化吸引術」で、濁った水晶体を超音波で破壊し、代わりに人口水晶体(眼内レンズ)を挿入します。しかしながら、人口水晶体にはピント調節機能がないため、手術後に視力矯正(メガネなど)が必要になることもあります。

白内障の予防方法

点眼薬で進行を遅らせる

老人性白内障の場合、初期症状の自覚はほとんどありません。霞み目や視力の低下を感じるようになると、手術を検討する必要が出てきます。

初期段階であれば点眼薬を使って進行を遅らせることは可能です。ただ、あくまでも遅らせるだけなので、いつかは手術が必要になるでしょう。適切な時期に手術を受けるためにも、白内障の診断された際は、定期的に経過観察を受けるようにしましょう。

紫外線やブルーライトを浴びる機会を減らす

紫外線やブルーライトは、白内障の原因の1つである活性酸素を発生させます。予防としてサングラスや防止で紫外線を防ぎ、ブルーライトをカットするメガネを使用するなどして、目を守るようにしましょう。

食生活の改善

食生活の乱れや運動不足などが原因で起こりがちな糖尿病は、白内障を併発する危険性をはらんでいます。そのため、1日3食規則正しく、バランスの取れた食事を摂ることが大切です。

とくに、水晶体にはルテインやゼアキサンチンが多く存在していることから、これらの栄養素を持つ食材を積極的に取りたいところです。具体的には、ホウレン草やブロッコリー、トウモロコシ、ケールなどが挙げられます。

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